東京にいる時は、ファッションやモードが好きだからこそもっとクールに描いていた部分があります。水彩画に向き合う時間が増えたことで、滲ませていくことで偶然できる色がとても綺麗で、そしてその綺麗な色を引き立てたいからこっちは締めようなど、楽しみながら描けていると思います。道を歩けば色々な花が咲いているので、それを少しだけ摘んで、絵と花を組み合わせたり、絵を切り取って綺麗な景色にかざして重ねたり。新しいアイディアも生まれ、仕事に対してのびのびと向き合えるようになりました。

東京では人間関係にちょっと疲れたり、生きづらいなぁと感じていた部分もありました。けれど、こちらのある意味大雑把な部分やのんびりとした感覚が、逆に私には合っていたんだと思います。例えば家のメンテナンスで水道の人と約束をしたけど、時間には来ない。いざ来たら土足であがろうとする。そんな風に細やかな違いはもちろんたくさんあります。異国の地ですから。でもそういう違いみたいな部分に対して私は寛容な方だから、そういう部分にストレスを感じませんでした。むしろ、寛容にのんびりと過ごせる土地のおかげで、自分軸みたいなものが育ってきたことを感じます。
例えば、ファッションに関しても、人の目を本当に気にしなくなりました。自己顕示欲みたいなものや人の評価、流行などを気にしなくなり、心地よさと清潔感が重要に。ファッションは好きなので、ニュージーランドのブランドやお店をたまに覗きますが、選ぶ基準が変わりました。ファッションに限らずですが、そもそも「あなたはこういうファッションが好きだよね」「私はこういうファッションが好きです」と、みんなそれぞれ違いを普通に認め合っている。そういう感覚や関係性を、とても好ましく感じます。肩の力が抜けて、のびのびと過ごしながら、自分のキャラクターとじっくり向き合うことが出来る。それによって、自分がやりたい表現ってなんだろう？という部分を深く考えられるようになりました。

子どもがいるので、自分だけの人生ではなく、彼らのタイミングや希望が一番大事。そういう中で、“自分がそこで何ができるのか”“どういう心持ちでいられるか”、それは自分次第だと思っています。臨機応変に柔軟でいたい。
色々な状況、事情の人が世の中にはたくさんいる。そういう中でみんなそれを受け入れながら楽しんでいると思います。私もそういうタフさを持ちたい。
イラストレーターの仕事は今までと変わらず楽しみながらも丁寧に向き合っていきたいと思っています。展示のご依頼も増え、ライブドローイングも楽しいし、新しいお仕事はどれも学びがあってとても楽しいので、自分で自分に制限を作らずチャレンジしていきたいと思います。